「10倍になる銘柄を教えます」――ネット上で跋扈しているこの手の宣伝文句だが、果たして本当なのだろうか。そもそも人に教えるくらいならば、自分で買えばいいじゃないか――そう思われる昨今。だから、このコメントも、「そういう目」で見られることを重々承知している。しかし、株式アドバイザーという職業柄、年末年始には各所からこの手のコメントを求められる。「そんなの分かるわけないじゃん」――これが正直な気持ちだ。付き合いや締め切りの都合もあり、「まあ、こんな感じでいいか」と妥協の産物を提供する。「そりゃ、毎年10倍になる銘柄を発見できたら、パラダイスですよ」――そう、思いながらも、「自分なりの尺度」で銘柄を絞っていく。
「次こそは良い年でありますように」――個人投資家の多くは、こういった思いで年末年始を過ごしていることだろう。しかし、実際には、毎年同じように「塩漬け株」の大量生産だ。「いつか上がってくれたらいいな」――そんな思いも届かず、「あれっ?この銘柄、まだ持っていたんだっけ?」と、記憶と忘却の境目を彷徨っている。「私はいったい何をしているんだ?」
「人に教わるのはヤメましょう」――大谷翔平ではないが、人を羨んだり、憧れたり、他人の影響を受けるのは、今年こそヤメにしたい。株式投資は、やっぱり「自己責任」であり、「自己完結型」でなければならない。
「この銘柄いいよ」と知人から教わったところで、その人は決して「売り場」を教えてくれない。それはまさしく「出口のないお化け屋敷」であり、半永久的に未知との生物と戦いとなるのだ。そんな茨の道を進む勇気はあるのか?
個人投資家の多くが損をしている。実際、勝ち切る人は少なく、ほとんどの投資家が自責と後悔の念に包まれている。「何とかならないものか・・・」
投資家にとって重要なのは、「ルール作り」だ。どういったときに買って、どういったときに売るのか――それを明確にする必要がある。なぜならば、株価が上がってくると、「もうちょっと持ってみよう」と欲が出てしまうし、逆に下がってくれば、「もう、少し待ってみよう」となるからだ。入口と出口が不明瞭であり、結果的に相場に振り回されてしまう――そんな傾向が強いのである。
「では、どんなルールにすれば良いのか?」――ここが本当に難しい。なぜならば、個人個人、まったく違うからだ。「そんなの関係ない。だって、10倍になる銘柄なら、誰でもハッピーじゃん」――確かにそうだ。でも、そんな銘柄、簡単に見つかるわけではない。あくまでも「理想の話」だ。
だから、我々はこの難しい「ルール作り」を最優先に考えなければならない。他人に振り回されない自分なりのルール――これを確立することが重要となる。
ここから先は私なりの「ルール」について説明しよう。あくまでも「参考」なので、テキトーに聞き流してほしい。
そもそも株式市場には「2つのタイプ」の銘柄が存在する。それは「割高株」と「割安株」だ。一見、同じくらいの数が存在しているように思えるが、実際には全然ちがう。「割高株」の方が圧倒的に多いのだ。「割安株」はほんの一握り。個人投資家がランダムに銘柄を選択し、お互いが最終的に「理論株価」に収束するのであれば、圧倒的に損をする可能性が多いことが分かる。これがイメージ図だ…
しかも、個人投資家の多くは「今、上がっている銘柄」に食指を伸ばす傾向が強く、「割高株」を掴みにいく可能性が高い。いわゆる「イナゴタワーの主役」だ。「著名投資家が買った」とか訳のわからない情報に踊らされ、この「割高株」を積極的に買い支える。そして彼らに悠々と利食いされて、逃げられるのだ。こんな方法では儲かるわけがない。
だから、エントリーの段階で、「割高株」ではなく、「割安株」を選ぶようにしなければならない。この割高・割安というのは、「(業績などの)ファンダメンタルズ」で判断すること。私は企業業績を独自の視点で分析し、「割安株」を選別するようにしている。
そして、「すぐに急騰しそうな銘柄」を探すことだ。それは何か。簡単にいえば、足元で急騰した銘柄(連続ストップ高した銘柄)を選ぶのだ。前述と矛盾すると思われるかもしれないが、実際には違う。なぜならば、銘柄選択の段階で「割高株」は排除しているからだ。すぐ崩れるイナゴタワーには決して手を出さない。あくまでも「業績的に買っても大丈夫」という銘柄を選択する。仮に足元で急騰したとしても、「ここで買ってもさらに上値余地がある」――そういう銘柄を狙うのだ。
一方、出口はどうなるのか。それは簡単、「割安でなくなったら」である。株価が上昇し、ある一定水準を超えると、そこで「割安株」でなくなる。「割高株」になってしまうのだ。これが売却のサインである。仮にそのあと上がっても構わない。死んだ子の年は決して数えないのだ。
以上、整理するとこうなる。
① 連続ストップ高銘柄を探す
② その銘柄が割安であれば買う
以上である。
このような銘柄群を、個人的に「ワンスト銘柄」と呼んでいる。「ワン・モア・ストップ高銘柄」の略である。「もう一回、ストップ高して!」という強い思いが込められている。実際、2回ストップ高した銘柄の再度のストップ高の可能性は高く、値動きを見ていても面白い。そういったエンターメント性も考慮している。
現在のワンスト銘柄のランキング表は以下の通りである。
「割安度」が低いものほどランキング上位となる。例えば、第1位のアクセスグループ(7042)の割安度は8.5%。100%が「理論株価」なので、約12倍になる可能性があるということ。逆に第17位のテノ.は割安度が92.5%。100%までかなり近いので、8%程度の上昇余地しかない。「妙味」が違うというわけだ。
だから、正しい使い方としては、「ランキング1位の銘柄から、順次、買っていく」ということになる。例えば資金が50万円の人は、第1位から第3位までを同金額ずつ買う、というのが有効だろう。そして株価が上昇してきたら、他の銘柄と入れ替える。
以上のように、今回は「10倍が狙える銘柄」を独自の視点で分析した。「割高・割安」の判断基準は“企業秘密”なので、公開はご容赦いただきたい。
重要なのは、入口と出口をはっきりさせること。決して他人に流されない独自のルール作りをすることだ。そして決めたルールを必ず守ること。「今回だけは例外」ということはあってはならない。株式投資には強靭な精神と実行力が必要だ。もし、それができないのならば、滝行かお遍路でも行って鍛えなおすしかない。(笑)
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